憧れ、叶う。

　去年から時計屋さんを通りかかると、いつも指をくわえて見ていた腕時計があった。

　昔、あったよね。黒人の男の子がショーケースの中のトランペットを

　眺めているコマーシャル。

　気分は、そんな感じだった。

　高いんだ。この時計。

　見つめるたびに、腕にこれを巻いた自分を想像してみた。

　すると、あらら不思議。

　なんかチョット素敵な私になっちゃう。

　時計屋さんを離れるとき、マッチ売りの少女が擦ったマッチの炎が

　消えるようにこんな妄想も消えてしまう。

　そんなことを何度か繰り返していた。

　今年に入って、この時計、私の腕に巻かれています。

　今年は、結婚して１５年目。

　銅婚式というのだそうだ。

　で、お祝いとして。

　憧れていたもの、手に入りました。

　これからも、いろんなものを、見て、食べて、経験して、憧れていきたいな。

　それって、きっと、叶うものだから。