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父との散歩

 子供のころ、日曜日になると父はよく散歩に連れて行ってくれた。

朝ごはんを食べてから電車に乗る。行き先はいつも決まっていた。

有楽町駅で降りて、少し歩くと急に緑が多くなる。そう、日比谷公園だ。

 私と妹は、大きな噴水をしばらく眺めてからポップコーンを買ってもらい、鳩に餌をやる。

父はベンチに座り、物思いに耽っている。

 ポップコーンがなくなるとまた歩き出し、小さな池を目指す。この池には鶴と亀の等身大の銅像があって、私は本物じゃないかと思っていた。

 「ねえ、お父さん。この鶴と亀は本物?」と聞く私に、父は

 「さあ、どうだろうね。」と答えた。

 私と妹は、側にある小枝で亀を突っついてみようと思ったが、届かなかった。

 何回か行くうちに、いつも同じポーズで、ピクリとも動かないそれは作り物だと気付いた。

 公園を出るとすぐ、皇居がある。その周辺も、とても広く静かで、父はいつになくゆっくりと歩き、遊んでいる私たちを見ていた。

 冬には、千代田区内幸町のあたりに野外のスケートリンクがあったので、そこにも連れて行ってもらった。私は専ら手すり掃除。スケートの得意な父は楽しそうに滑っていた。

 高層ビルに囲まれたリンクは、風が冷たかったけど、綺麗でカッコよくて好きだった。

 日曜日しか休みのなかった父。

 父の、自由で楽しい時間のお供をさせてもらった、そんな感じのする散歩だった。

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